黒目を含む眼球の位置がずれ、両目でまっすぐに物を見られなくなることがある「斜視」。
先月のブログでは、斜視の原因・症状のお話をさせていただきました。
今回は、眼科で行う「斜視の治療方法」について、ご説明します。
目次
■斜視の治療方法
◎手術or手術以外の治療(見え方を矯正)に分けられます
斜視の治療は、大きく、「手術」or「手術以外の治療」に分けられます。
[斜視の治療方法]
1.手術
目的:
黒目を含む眼球の位置のずれを直す
両目でまっすぐに物を見られるようにする
<治療内容>
外科的な手術を行い、目の筋肉の位置や長さを調節し、黒目を含む眼球の位置のずれを直します。
手術時間は目の筋肉1つにつき、20~30分程度です。
中学生・高校生の方や大人の方は、局所麻酔にて、日帰り手術を行えます。小学生以下のお子さんは、原則として、全身麻酔での手術(3泊前後の入院を伴う手術)になります。
2.手術以外の治療
※ボツリヌス注射を除き、以下はすべて見え方の矯正のみ
※ボツリヌス注射を除き、以下の治療(矯正治療)は眼球の位置のずれを直す性質はありません
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ボツリヌス注射
目的:
黒目を含む眼球の位置のずれを直す(斜視の手術に似た効果を期待できる)
両目でまっすぐに物を見られるようにする
<治療内容>
目の筋肉に、A型ボツリヌス毒素(ボトックス)を注射。A型ボツリヌス毒素の作用によって目の筋肉を麻痺(一過性の不全麻痺)させ、筋肉の緊張を緩めることで、眼球の位置のずれを軽減します。
なお、斜視に対するボツリヌス注射の効果は時間の経過とともに薄れていくことが多いです。
長くても3~4ヶ月程度で眼球の位置が戻ってくることが多いため、効果を継続させるには、定期的に注射を打つ必要があります。
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眼鏡、コンタクト(子どもの斜視の治療)
目的:
両目でまっすぐに物を見られるようにする
<治療内容>
眼鏡、コンタクトを装用することで見え方を矯正し、両目でまっすぐに物を見られるようにします。
眼鏡、コンタクトの装用は、遠視や近視による、子どもの斜視(調節性内斜視など)の治療です。
大人は、物を見る能力が固定されています。
大人の斜視の治療で、遠心や近視の見え方を矯正するために眼鏡、コンタクトを装用することは原則としてありません。
なお、後述するプリズム眼鏡は、大人の斜視の治療で用いる場合があります。
子どもの斜視の治療で眼鏡、コンタクトを用いる場合は、物を見る能力が固定される前の「9歳未満の時期」に眼鏡、コンタクトの装用を開始することが重要です。
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遮蔽法(アイパッチ療法)(子どもの斜視の治療)
目的:
両目でまっすぐに物を見られるようにする
<治療内容>
アイパッチor左右どちらか片方が曇りガラスの眼鏡
で視力が良い方の目を視界を遮り(さえぎり)、視力が悪い方の目の「物を見る能力」を鍛える治療法です。
遮蔽法(しゃへいほう)は、主に9歳未満の子どもの斜視、弱視で行うことがある治療になります。物を見る能力が固定されている大人の斜視の治療では効果が期待できないため、原則として、遮蔽法は行いません。
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両眼視機能訓練(子どもの斜視の治療)
目的:
両目でまっすぐに物を見られるようにする
<治療内容>
カイロスコープや大型弱視鏡を通して物を見ることで、両目で物を見る能力(両眼視機能)を鍛える治療法です。
両眼視機能訓練は主に9歳未満の斜視の治療になります。こちらも物を見る能力が固定されている大人の斜視の治療では、原則として、両眼視機能訓練は行いません。
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プリズム眼鏡(大人にも適応可能)
目的:
眼鏡の装用時に両目でまっすぐに物を見られるようにする
<治療内容>
眼鏡にプリズム加工を施すことで光を屈折させ、眼鏡の装用時に両目でまっすぐに物を見られるようにします。
プリズム眼鏡は装用時のみ、両目でまっすぐに物を見られるようにする方法です。プリズム眼鏡には、斜視そのもの(眼球の位置のずれ、両眼視機能)を根本的に改善する効果はありません。
両眼視機能を根本的には改善できませんが、斜視が原因の複視(物が二重に見える)による眼精疲労を軽減する方法としては、プリズム眼鏡が選択肢の一つとして挙げられます。
■斜視の手術の成功率は何%くらい?
◎手術により眼球の位置のずれを直し、両眼視機能の正常化にアプローチしますが、手術の効果を得られない場合もあります
斜視の手術を受けることをご検討されている方は、「斜視の手術は何%くらいの成功率なのか」など、ご心配もあるかと思います。
斜視の手術の成功率についてですが、それぞれの患者様の斜視の状態や手術法の違いもあるため、一概に「何%、成功する」とはお伝えできません。
斜視の手術に関して、ご留意いただきたい点
多くの方は手術を行うことで、数年~数十年のあいだ、眼球の位置のずれを直して目の見た目を正常に近づける効果を期待できます。ただし、手術を行っても、眼球の位置のずれが再発し、再手術が必要になる場合もあります。
また、手術で眼球の位置のずれを直せても、両目でまっすぐに物を見る機能(両眼視機能)が改善されないケースもあります。
【斜視でお悩みの方は、まずは一度、当院までご相談ください】
斜視の治療の主な目的は、
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目の見た目(整容面)の改善
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両眼視機能の正常化
です。
目の見た目を改善するには、手術、または、ボツリヌス注射が選択肢になります。ボツリヌス注射は一時的な効果のため、眼球の位置のずれを改善するには手術が必要です。
なお、斜視は必ずしも手術が必要とは限りません。斜視の原因にもよりますが、軽度の斜視や9歳未満の子どもの斜視は、手術をせず、両眼視機能を鍛えることで物の見え方を改善できる可能性があります。
斜視でお悩みの方は、まずは一度、当院までご相談ください。
診察では、眼科医が目の状態を確認し、検査を行います。
手術をご希望の方には、当院にて、日帰り手術が可能です。小学生以下のお子さんへの手術など、全身麻酔+入院での手術にも対応しています。
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今回は、斜視の治療方法のご説明をさせていただきました。
今回にひき続き、来月のブログでは「斜視の種類 内斜視・外斜視の違い」について、お話しします。