前回のブログでは乱視の種類・症状・原因についてご説明をさせていただきました。前回に引き続き、今回は乱視の「矯正・治療方法」をご紹介します。
目次
■乱視の対処方法は?
◎レンズ、または、手術による対処で乱視の見え方を改善
乱視の対処方法は以下の2種類です。
①レンズ(眼鏡orコンタクトレンズ)による乱視の矯正
または、
②手術(乱視の治療)
◎矯正・手術が必要ではない弱い乱視もあります
人の目は完全な真円球ではなく楕円球です。角膜や水晶体で屈折させた光を一分の狂いもなく網膜上に集める(光で画像を結ぶ)ことは不可能なため、症状の差はあれど、どなたにも乱視はあります。
弱い乱視で生活に大きな支障がなく、見え方が気にならない場合は乱視の矯正・手術は必要がないケースも。
■眼鏡による乱視の矯正
◎乱視用レンズが入った眼鏡を用い、見え方を矯正します
眼鏡による乱視の矯正では乱視用レンズが入った眼鏡を用い、物がぼやけたりブレて見ええないように見え方を矯正します。
<乱視用眼鏡レンズのメカニズム>
眼鏡の乱視用レンズは2つの焦点を合わせられる円柱レンズを用い、見え方を矯正します。乱視の症状に合わせ、以下のレンズを用いて2つの焦点を作って調節することで物がぼやけたりブレて見えないようにします。
・凸型の円柱レンズ(遠視+乱視の場合)
・凹型の円柱レンズ(近視+乱視の場合)
{乱視用レンズの眼鏡では不正乱視は矯正できない}
病気や怪我など、後天的な原因で角膜(もしくは水晶体)がゆがむ不正乱視。不正乱視は角膜のゆがみ(病気や怪我による角膜の表面の変形(デコボコ))によって起きるケースが多いため、原則として乱視用眼鏡による矯正ができません。
不正乱視で角膜そのものがゆがんで(デコボコして)おり、見え方を矯正したい場合は、後述の乱視用ハードコンタクトレンズによる矯正が必要になります。
◎特殊なレンズにより、不正乱視を眼鏡で矯正できるケースも
ハードコンタクトレンズのような適切な矯正は不可能ですが、多少の乱視が残ってもかまわない場合は、角膜のデコボコに合わせて作られた特殊な乱視用眼鏡(i.Scription®など)を用いることで不正乱視を矯正できるケースがあります。
■コンタクトレンズによる乱視の矯正
◎乱視用にデザインされたコンタクトレンズを用い、見え方を矯正します
コンタクトレンズによる乱視の矯正では乱視用にデザインされたコンタクトレンズ(ソフトorハード)を用い、物がぼやけたりブレて見ええないように見え方を矯正します。
<乱視用ソフトコンタクトレンズのメカニズム>
乱視用のソフトコンタクトレンズは、角膜や水晶体が一定方向にゆがんでいる正乱視(せいらんし)の矯正に用いられます。
乱視の症状に合わせ、以下のコンタクトを用いることで乱視のゆがみを矯正し、物がぼやけたりブレて見えないようにします。見え方の矯正に加え、乱視用ソフトコンタクトレンズはその特殊なデザインにより、目の中でレンズがズレないように安定させる機能も持ちます。
・レンズの上部が薄く、下部が厚いコンタクトレンズ(プリズムバラストデザイン)
・レンズの上下が薄く、左右が厚いコンタクトレンズ(ダブルスラブオフデザイン)
<乱視用ハードコンタクトレンズのメカニズム>
乱視用のハードコンタクトレンズは病気や怪我などの後天的要因で起きる不正乱視(ふせいらんし)の矯正に用いられます。正乱視で非常に乱視の症状が強い場合も乱視用のハードコンタクトレンズを用いる場合があります。
不正乱視でソフトコンタクトレンズを用いることができないのは、不正乱視は角膜のゆがみが原因で起きるものが多いためです。不正乱視の方(角膜のゆがみが起きている方)にやわらかいソフトコンタクトレンズを用いると、ゆがんだ(デコボコした)角膜によってレンズもゆがんでしまいます。
上記の理由から、コンタクトレンズによる不正乱視の矯正ではゆがまない硬いレンズであるハードコンタクトレンズを用います。
{涙液レンズ(乱視用ハードコンタクトレンズ)による不正乱視の矯正のメカニズム}
ハードコンタクトレンズによる不正乱視の矯正では、コンタクトレンズ自体の矯正効果に加え、レンズと角膜のあいだにある涙もレンズの一部として利用することで物がぼやけたりブレて見えないようにします。このような、涙をレンズの一部として利用するコンタクトレンズを「涙液(るいえき)レンズ」と呼びます。
■手術による乱視の治療
◎屈折矯正手術(レーシック、ICL)で乱視の見え方を矯正
レンズ(眼鏡、コンタクト)による見え方の矯正のほか、乱視には手術による治療もあります。
乱視の治療においては、主に以下の2種類の手術が存在します。手術方法は異なりますが、どちらも、目に入ってくる光の屈折率を変える「屈折矯正手術」に分類されます。
・レーシック
レーシックとは、レーザーを照射して角膜を削り、角膜の形を変えることで光の屈折率を調整して見え方を矯正する手術です。乱視のほか、近視・遠視もレーシックの適応対象になります。
・ICL(インプランタブルコンタクトレンズ、フェイキックIOL)
ICLとは、目の角膜と水晶体のあいだにある虹彩(こうさい)の後ろに眼内レンズを入れ、見え方を矯正する手術です。乱視のほか、近視・遠視もICLの適応対象になります。
{屈折矯正手術のメリット・デメリット}
レーシックやICLによる屈折矯正手術は眼鏡やコンタクトレンズを用いず乱視・近視・遠視を矯正できる点が最大の特徴です。
ただし、手術にともなう細菌感染、および、手術の失敗による見え方のトラブルなど、屈折矯正手術には少なからずリスクも存在します。
費用面においてはレーシック、ICL共に自由診療であり保険が利かないため、保険診療で行える手術(白内障手術など)と比べて手術費が高額な点もデメリットとして挙げられます。
【見え方や生活スタイルを考慮し、ご自身に合った矯正・治療方法を選ぶことをおすすめします】
「乱視の矯正・治療方法」をご紹介させていただきました。
乱視は眼鏡、または、コンタクトレンズによる矯正が一般的です。眼鏡やコンタクトレンズを使いたくない・わずらわしい場合は屈折矯正手術が選択肢になります。
ただし、屈折矯正手術は十分な検討が必要です。特にレーシックは手術を行うと目の形を元には戻せないため、手術を受けるかどうかを慎重に判断しなければなりません(※)。
(※)ICLは眼内レンズを取り除くことで元の目の
状態(一度、メスは入っていますが)に戻せます。
– 乱視の有無・種類を確認するための検査を行っています –
乱視は大きく分けて2種類あり、正乱視と不正乱視では対処方法が異なります。
乱視の可能性があるときはご自身で判断せず、まずは、眼科にて診察を受けることが大切です。眼科で診察を受けず、安価な眼鏡・コンタクトレンズなどを用いて自己判断で対処すると、かえって乱視の症状が進んでしまう場合があります。
眼科で診察を受け、乱視の有無・種類を確認することでより適切な矯正・治療を行いやすくなります。
物がぼやける、ブレて見えるなどの症状がある方は当院までご相談ください。眼科医が目の状態をチェックし、乱視の検査を行った上で適切な矯正・治療方法をご提案させていただきます。