前回のブログでは緑内障の症状・原因のご説明をさせていただきました。
今回は「緑内障は治る?」および「緑内障の治療方法」についてお話しします。
目次
■緑内障は治る?
◎緑内障で障害された視神経は元に戻せません
眼圧の上昇など、緑内障は何らかの原因によって視神経が障害を受けることで発症する目の病気です。障害を受けた視神経は神経線維が減り、視野が狭まって視力が低下していきます。
神経線維そのものが減っていくため、緑内障で障害された視神経は元に戻せません。
◎元の状態に戻そうとするのではなく、これ以上、症状を進行させないようにすることが大切です
緑内障で障害された視神経は元に戻せないため、緑内障を「治す(根本的に状態を改善する)」ことはできません。
緑内障は治す(元の状態に戻そうとする)のではなく、これ以上、症状(視神経への障害による視野の狭まり、視力の低下)を進行させないようにすることが大切です。
緑内障は放置すると症状が進行し、失明に至ることがあります。日本人で失明した方の約41%が緑内障により視力を失っています(※)。
(※)鹿児島大学 坂本泰二教授「網膜脈絡膜・視神
経萎縮症に関する調査研究 」(2021)より引用。
緑内障の治療の主な目的は症状の進行を食い止め、失明を防ぐことです。緑内障による視野の狭まりや視力の低下、および、失明を防ぐために治療を行います
■緑内障の治療方法
①点眼薬
緑内障の治療は、点眼薬で眼圧を下げる方法が一般的です。ただし、日本人の緑内障の約60~70%が眼圧が正常にも関わらず緑内障を発症する「正常眼圧緑内障」であることがわかっています(※)。
(※)日本医療研究開発機構「正常眼圧緑内障の新たな原因発症
正常眼圧緑内障の原因は眼圧の上昇ではないと考えられています。ただし、直接の原因ではないものの、眼圧の上昇は緑内障をひき起こし、緑内障を進行させる原因の一つです。点眼薬により眼圧の上昇を抑えることで、正常眼圧緑内障を含む、さまざまなタイプの緑内障の症状の進行を抑えられる可能性があります。
眼圧を下げる点眼薬で効果が見られない場合は、患者様の目の状態を見ながら、以下の点眼薬による治療を行うケースもあります。
・房水の排出をうながす点眼薬
・房水の過剰な分泌を抑える点眼薬
・視神経への血流や栄養状態の改善をうながす点眼薬
②内服薬
点眼薬のほか、眼圧を下げる内服薬を用いて緑内障の症状の進行を抑える場合もあります。ただし、内服薬は副作用がでることがあるため、原則として、長期間の内服治療は行えません。
③レーザー治療
点眼薬や内服薬で効果が見られない場合、または、症状が進行しているケースではレーザー治療を行うことがあります。
レーザー、手術(後述)、共に、緑内障では以下の2つのタイプに合わせて適切に治療を行うことが重要です。
≪緑内障のタイプ(隅角が開いているor狭まっている)≫
・開放隅角緑内障
隅角(ぐうかく:房水の排出口)が開いており、眼圧が正常にも関わらず発症する緑内障(=正常眼圧緑内障(日本人に多い緑内障))。
・閉塞隅角緑内障
隅角が狭まり、房水の排出が滞ることで眼圧が上昇し、発症する緑内障。
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開放隅角緑内障は眼圧が正常にも関わらず発症しますが、房水の排出をうながして眼圧を下げるアプローチは開放隅角緑内障(≒正常眼圧緑内障)を含む緑内障全般の症状の進行を抑えるのに役立ちます。
上記の理由から、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、どちらにおいても、房水の排出をうながして眼圧を下げるアプローチを中心に、症状の進行を抑えるためのレーザー治療を行います。
<開放隅角緑内障のレーザー治療>
・レーザー繊維柱体形成術(SLT)
房水のフィルターの役割を持つ繊維柱体の詰まりを解消し、房水の排出をうながします。
・レーザー隅角形成術(LGP)
目の瞳孔の大きさを変える役割を持つ虹彩を収縮させ、隅角を開くことで房水の排出をうながします。
<閉塞隅角緑内障のレーザー治療>
・レーザー虹彩切開術(LI)
専用のコンタクトレンズを目に装着した状態で虹彩を切開します。虹彩の切開によって隅角を開くことで道(バイパス)を作り、房水の排出をうながします。
④手術
点眼薬やレーザー治療で効果が見られない場合、手術を検討します。
緑内障の手術はフィルターの役割を持つ繊維柱体の一部を切開し、房水の排出をうながす「繊維柱体切開術」が一般的に行われています。
当院では、目への負担を最小限に抑えた低侵襲緑内障手術「MIGS」を行っています。MIGSは白内障手術と同時に行うことが可能です。
{緑内障の症状の進行を抑えるために白内障手術を行うことも}
緑内障の中でも、隅角が狭まり房水の排出がさまたげられることで発症する閉塞隅角緑内障に対しては、症状の進行を抑えるために白内障手術を行う場合があります。
白内障手術とは、白く濁った水晶体(目のレンズ)を取り出し、人工の眼内レンズを入れる目の手術です。白内障手術により虹彩と角膜の間隔を広げることで、房水の排出をうながします。
【緑内障は早期発見・早期治療が重要です】
緑内障のレーザー治療は数分~10分程度で終了します(※)。点眼麻酔をするため、手術中・手術後に痛みは感じません。
緑内障手術(MIGS)の所要時間は約10分です(※)。手術は入院が必要になりますが、手術日を含め、3~4日前後で退院できるケースが多いです(※)。
緑内障手術(MIGS)は点眼麻酔をした上で行います。手術中・手術後に痛みはほぼ感じません。
痛みは感じませんが、手術後、目の出血(前房出血)が起き、目がかすみます。出血・目のかすみは一時的なものであり、術後、1~2週間で目の状態は改善していきます。
(※)患者様や症状により、施術時間・入院期間が異なります。
{点眼薬で緑内障の症状の進行を抑えられる可能性があります}
緑内障は必ずしもレーザー治療や手術が必要になる訳ではありません。患者様や目の状態によっては、点眼薬で症状の進行を抑えられる可能性があります。
-眼科で定期検診を受けることをおすすめします-
緑内障は自覚症状に乏しく、ご自身では気づけないケースが多いです。
症状に気づかず、緑内障を放置してしまうと失明に至ることもあります。
緑内障をはじめとする目の病気や異常を早期に発見し、早い段階で治療を開始するためには眼科での定期的な検査が欠かせません。
当院では以下の緑内障検査を行っています。
・眼圧検査
・眼底検査
・視野検査
定期的に検査を行うことで目の病気や異常を察知しやすくなり、早期に治療を開始する可能性を高められます。
大切な目を守るために、定期的に眼科で検査を受けましょう。