白内障手術では、白く濁った水晶体を除去し、人工の眼内レンズに入れ替えます。
眼内レンズにはピント(焦点)が合う距離により、単焦点、または、多焦点(2焦点、3焦点)の種類があります。
白内障手術を受ける際は、「仕事や趣味で手元を見ることが多い」「遠くの景色をはっきり見たい」など、患者様のご希望やライフスタイルに合わせて眼内レンズを選ぶことで術後の見え方の改善につながり、コンタクトレンズ・眼鏡が必要になる場面を減らせます。
今回は「白内障手術で用いる眼内レンズの選び方」についてご説明します。
目次
■眼内レンズの種類
◎見たい焦点に合わせ、単焦点or多焦点、どちらかの眼内レンズをお選びいただきます
白内障手術で用いる眼内レンズは以下の3種類です。
・単焦点レンズ(1つの距離にのみ、ピントが合う)
・2焦点レンズ(2つの距離にピントが合う)(多焦点レンズ)
・3焦点レンズ(3つの距離にピントが合う)(多焦点レンズ)
眼内レンズで合わせられる、焦点までの距離は以下の3つがあります。
・近距離(手元=目から30~40cm程度の距離)
・中距離(パソコン画面=目から60~70cm程度の距離)
・遠距離(目から5m以上の距離、カレンダーや壁時計、外の景色など)
上記に加え、乱視の方向けに乱視矯正が入った眼内レンズ(トーリック眼内レンズ)もあります。
■眼内レンズの種類、焦点までの距離はどれを選ぶのが良い?
◎ご希望やライフスタイルに合わせて、眼内レンズの種類、焦点までの距離をお選びいただくことをおすすめしています
白内障手術では患者様ご自身で眼内レンズの種類をお選びいただきます。
眼内レンズの種類、また、焦点までの距離は「これが良い」「これさえ選んでおけばバッチリ」といった物はありません。
単焦点、多焦点(2焦点、3焦点)、どちらにもそれぞれにメリット・デメリットがあります。
白内障手術を受ける際は、患者様のご希望やライフスタイルに合った眼内レンズ、焦点までの距離を選ぶことで術後の生活においてより便利に、より見えやすくなる効果を期待できます。ご自身に合った眼内レンズのご選択により、コンタクトレンズ・眼鏡が必要になる場面も減らせます。
■単焦点レンズのメリット・デメリット
◎近・中・遠、いずれか1つの距離にピントを合わせます
単焦点レンズは近・中・遠、いずれか1つの距離にピントが合う眼内レンズです。
◎単焦点レンズは合わせた距離をはっきり見やすい
単焦点レンズのメリットは、近・中・遠、いずれか1つ、合わせた距離(お選びいただいた距離)の物をはっきり見やすい点です。
複数の距離にピントが合う多焦点レンズと比べ、単焦点レンズの方が、お選びいただいた距離の物をはっきり見ることができ、色合い(色の鮮やかさ、色の濃淡)もくっきり見やすくなります。
多焦点レンズで起こることがある以下のような現象も、単焦点レンズでは比較的起きにくいです(※)。
・グレア(光がぎらぎら見えたり、まぶしく感じる現象)
・ワクシービジョン(物がかすんだり、モヤがかかっているように見える現象)
・ハロー(光に輪がかかって見える現象)
(※)患者様や目の状態によっては単焦点レンズでもグレア、
ワクシービジョン、ハローが起きることがあります。
◎単焦点レンズのデメリットは1つの距離にしかピントを合わせられない点
お選びいただいた距離の物がはっきり見えやすいメリットがある一方、単焦点レンズは1つの距離にしかピントを合わせられません。
1つのみの距離にピントを合わせるため、患者様やライフスタイルによっては白内障手術後、見えにくい距離(お選びいただいていない距離)を見るために眼鏡が必要になることがあります。
■多焦点レンズのメリット・デメリット
◎近・中・遠のうち、2つ、または、3つすべての距離にピントを合わせます
多焦点レンズは近・中・遠のうち、2つ、または、3つすべての距離にピントを合わせる眼内レンズです。
2焦点レンズは近・遠、もしくは、中・遠の2つの距離にピントを合わせます。
3焦点レンズは近・中・遠、3つすべての距離にピントを合わせます。
◎多焦点レンズは複数の距離の物をよく見られるようになる
多焦点レンズのメリットは、複数の距離の物をよく見られるようになる点です。
2焦点レンズは近・遠、もしくは、中・遠、3焦点レンズは近・中・遠、3つすべての距離にピントを合わせられるため、単焦点レンズと比べてコンタクトレンズ・眼鏡が必要になる場面を減らせます。
◎多焦点レンズのデメリットは単焦点レンズと比べるとはっきり見えくい点です
複数の距離にピントを合わせられる多焦点レンズ。このように聞くと多くの患者様が「じゃあ、多焦点レンズでイイや」とおっしゃいます。しかし、多焦点レンズにはデメリットもあります。
複数の距離にピントを合わせるという性質上、多焦点レンズは見え方のはっきり度合い・色合いの見分けやすさ、という点では単焦点レンズに劣ります。
単焦点レンズはお選びいただいた距離の物が「非常にはっきり見やすい」のに対し、多焦点レンズはよく見えますが、単焦点レンズと比べるとはっきりさ(明瞭度)や色合いの見分けやすさ(色の鮮やかさや濃淡の区別)の点で劣ります。
◎多焦点レンズは手術後、グレア、ワクシービジョン、ハローなどの不具合が起きることも
複数の距離にピントを合わせるという性質上、多焦点レンズでは以下の不具合が手術後に起きることがあります。
・グレア(光がぎらぎら見えたり、まぶしく感じる現象)
・ワクシービジョン(物がかすんだり、モヤがかかっているように見える現象)
・ハロー(光に輪がかかって見える現象)
上記の不具合が起きることもある多焦点レンズですが、患者様によっては不具合が起きない場合もあります。多焦点レンズにしたからと言って、かならずしも上記のような見え方の不具合が起きる訳ではありません。
■眼内レンズの選び方 セルフチェックリスト
◎ご自身のご希望やライフスタイルに合わせて、眼内レンズをお選びください
以下の表は眼内レンズの選び方のセルフチェックリストです。
それぞれの項目をご確認し、ご自身のご希望やライフスタイルに合わせて、眼内レンズをお選びいただくことをおすすめします
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単焦点眼内レンズ |
多焦点(2焦点・3焦点)眼内レンズ |
術後の見え方 |
「近・中・遠」、いずれかの1つの距離の物が非常にはっきりと見える |
「近・遠」、「中・遠」(2焦点)もしくは「近・中・遠」(3焦点)の複数の距離の物がよく見える |
コンタクト・眼鏡は必要か |
必要になることが多い (お選びいただいていない距離の物を見たい場合) |
ケースによって必要 (2焦点「中・遠」で近距離の物を見たい場合など) |
白内障手術に保険が適用できるか |
保険適用できる |
保険適用できる (眼内レンズ代は自費になります) |
適している方 |
□仕事や趣味において、可能な限り物をはっきりと、色合いもくっきりと区別をつけて見たい方 □夜、車を運転することが多い方 □手元を見る細かい作業をすることが多い方 □緑内障や網膜疾患など、白内障以外の眼の疾患をお持ちの方 □白内障による視力低下が見られない方 □瞳孔が極度に小さい方 □糖尿病の方 □神経質・完璧主義の方(物をはっきり見ないと気持ち悪い、気分が済まない方) |
□術後、なるべくコンタクトレンズ・眼鏡をかけたくない方 □遠近両用のコンタクトレンズ・眼鏡を使っていた方 □夜、車の運転はあまりしない方 □白内障以外の眼の疾患がない方 □コンタクトレンズ・眼鏡を使わず、裸眼でゴルフやプール、スキューバダイビングなどのスポーツ・アクティビティを楽しみたい方 |
【白内障手術をご検討している方はご遠慮なくご相談ください】
白内障手術で用いる眼内レンズには、単焦点レンズ、多焦点レンズ、それぞれにメリット・デメリットがあります。
患者様ご自身のご希望やライフスタイルをよく考慮した上で眼内レンズをお選びいただくことで、術後、お選びいただいた距離の物の見え方が改善する効果を期待できます。
「白内障手術を受けるかどうか迷っている」
「自分に合った眼内レンズを知りたい」
など、白内障手術や眼内レンズに関するご質問・ご不安がある方はご遠慮なくご相談ください。
診察では眼科医が目の状態を確認し、それぞれの患者様に適した眼内レンズのアドバイスをさせていただきます。