左右の目に視力差がある、ガチャ目(不同視)。
先月のブログでは、不同視の概容・症状・原因のお話をさせていただきました。
お悩みの方も少なくない、不同視。
今回は、眼科で行う不同視の治療方法(見え方の矯正方法)について、ご説明します。
目次
■ガチャ目(不同視)の治療 どれくらい左右で視力差があると治療の対象になる(不同視の許容範囲)?
不同視の治療では、原則として、
「左右の視力差を少なくする」ための治療
(両目での見え方を改善するための矯正(眼鏡・コンタクトの装用による屈折率の矯正)を含む)
を行います。
眼鏡・コンタクトの装用が治療(矯正)の基本ですが、
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目の損傷
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目の異常
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目の病気
が原因の不同視は損傷・異常・病気に対する治療が必要になる場合も。
①眼鏡・コンタクトによる左右の視力差の矯正
不同視の治療では、眼科で処方する眼鏡・コンタクトを装用して、左右の視力差を矯正する方法が用いられることが多いです。
{2D以上の視力差がある場合は、コンタクトの装用が適しているケースも}
左右の視力差が2D(ディオプトリー:屈折力)以上ある場合は、眼鏡での矯正が難しいケースがあります。
眼鏡はレンズと目の距離が離れているため、上手く見え方を調節できない場合があるのです。
上記の理由により、不同視で2D以上の視力差がある場合は、レンズと目のあいだに距離がないコンタクトの装用が適しているケースも。
{そもそも「2D以上の視力差=不同視」だから、2D以下の視力差は治さないの?}
眼科では一般的に、左右の屈折差が2D以上あると不同視と診断されることが多いです。
実際、左右の視力差が2D以上あると、
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物・人が二重に見える
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目が疲れやすい
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めまい・頭痛・肩こり
などの症状が出やすいです。
眼科医療では、
「左右の視力差が2D以上ある」状態を不同視と定義しているのですが、患者様によっては、2D以下の視力差でも上記のような症状が出る場合も。
2D以下の視力差で上記のような症状が出ている場合は、眼鏡・コンタクトの装用で左右の視力差を矯正することで、見え方の改善にアプローチできます。2D以下の不同視では、眼鏡の装用も有効な矯正方法の一つです。
②目の損傷に対する治療
交通事故や転倒、傷害事件に巻き込まれたなど、強い衝撃を受けて目が損傷し、不同視になる場合も。
目への強い衝撃のほか、
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スマホ・PCのモニターの見過ぎ
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カーブが合っていないコンタクトレンズの装用
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目の乾燥
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細菌感染
などが原因で目の角膜が傷つくケースもあります。
目の損傷が原因で不同視が起きている場合は、損傷した目の器官を治すための治療を行います。
[目の損傷に対する、眼科での主な治療方法]
角膜の損傷
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点眼薬・眼軟膏の使用
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レーザー治療
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結膜フラップ手術
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角膜移植手術(重度の角膜損傷の場合)
水晶体の損傷
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水晶体再建術(白内障手術:水晶体の代わりに人工の眼内レンズを挿入)
③目の異常・目の病気に対する治療
以下のような、目の異常(屈折異常(乱視)、視神経から脳に情報を伝える能力の異常(弱視))・目の病気が原因で不同視が起きる場合があります。
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角膜乱視
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弱視
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白内障
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緑内障
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網膜剥離・網膜静脈閉塞症・加齢黄斑変性などの目の網膜の病気
目の異常・目の病気が原因で不同視が起きている場合は、見え方を矯正するor目の病気を治すための治療を行います。
[目の異常・目の病気に対する、眼科での主な治療方法]
角膜乱視
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眼鏡・コンタクトレンズの装用
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オルソケラトロジー(就寝中にコンタクトレンズを装用し、日中の裸眼視力を改善する)
弱視(いずれも、8歳前後以下の子どもが対象です)(※)
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眼鏡の装用
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アイパッチ訓練
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アトロピン点眼
(※)現在の眼科医療では、原則として、8歳を過ぎると治療効果は限定的になる場合があります。8歳前後以上の方の弱視は、これ以上視力が低下しないよう、定期的に眼科を受診することが重要です。
白内障
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点眼薬
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白内障手術
緑内障
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点眼薬
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内服薬
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レーザー治療
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手術(繊維柱帯切開術など)
網膜剥離・網膜静脈閉塞症・加齢黄斑変性などの目の網膜の病気
網膜剥離
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レーザー治療
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凍結療法
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ガス注入術
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手術(網膜復位術など)
網膜静脈閉塞症
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硝子体注射
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レーザー治療
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手術(硝子体手術など)
加齢黄斑変性
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硝子体注射
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光線力学的療法(PDT)
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レーザー治療
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手術(新生血管抜去術など)
■レーシックやICLなどの「屈折矯正手術」で不同視を治す選択肢について
◎屈折矯正手術で見え方の改善にアプローチできますが、手術は慎重に検討することが重要
眼鏡・コンタクトレンズの装用のほか、目の屈折異常に対しては、以下のような「屈折矯正手術」で見え方の改善にアプローチする方法も。
[主な屈折矯正手術]
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レーシック(レーザーで角膜を薄く削り、屈折率を矯正する手術)
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ICL(目の中に眼内コンタクトレンズを挿入し、屈折率を矯正する手術)
不同視は左右の目の屈折力の差(屈折異常)によってひき起こされるため、上記のような屈折矯正手術を受けることで見え方の改善にアプローチできます。
見え方の改善にアプローチできますが、屈折矯正手術には注意点も。
眼鏡・コンタクトレンズと異なり、屈折矯正手術は目にレーザーを照射して角膜を削ったり(レーシック)、目にメスを入れます(メスによるICL)(レーザーICLもあります)。
手術が失敗した場合は、レーシックは角膜を元の状態には戻せません。ICLは眼内コンタクトレンズを入れ替えられますが、最初の手術でかかる目への負担を含め、レンズの入れ替えの手術を行う場合、再度、目に負担がかかります。
[レーシック・ICLなどの屈折矯正手術で起こり得るトラブルの例]
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レーシック・ICLを受けたものの、思っていたよりも見え方が改善されなかった
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レーシック・ICLを受けた後、ハロー(にじみ)やグレア(まぶしさ)などの後遺症が残ってしまった
上記のようなトラブルが生じ、手術後に後悔する事態を避けるには、「不同視を改善するために、本当に屈折矯正手術が必要なのか」を慎重に検討することが重要です。
【見え方に異常がある、お子さんに変な仕草が見られる場合は早めに眼科を受診しましょう】
眼科で行う「不同視の治療(矯正)方法」について、ご説明をさせていただきました。
ガチャ目(不同視)は必ずしも、治療が必要とは限りません。目の病気などが原因でなければ、眼鏡・コンタクトの装用で左右の目の視力差を矯正できる可能性があります。
なお、不同視の見え方を矯正するために眼鏡・コンタクトレンズを装用するときは、必ず、眼科を受診してください。眼科を受診せず、街中にある眼鏡店や通販サイトなどで眼鏡・コンタクトレンズを購入して装用すると、屈折率を正しく矯正できないおそれがあります。
眼鏡・コンタクトでの矯正ができる可能性がある一方、
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目の損傷
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弱視などの目の異常
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白内障、網膜剥離などの目の病気
が不同視と関係している場合も。目の損傷・目の異常・目の病気などが関係している不同視は、眼科での早期治療が望まれます。
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物・人が二重に見える
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目が疲れやすい
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原因不明のめまい・頭痛・肩こりが続いている
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首をかしげて物・テレビを見るなど、お子さんに変な仕草が見られる
上記のような症状がある方・お子さんの症状が見られる方は、早めに眼科を受診しましょう。特に、弱視が関係している不同視は8歳を過ぎると治療効果は限定的になるため、眼科で早期に治療を開始することが重要です。