
黒目を含む眼球の位置がずれ、両目でまっすぐに物を見られなくなることがある「斜視」。
前回の斜視の治療にひき続き、今回は「斜視の種類」について、ご説明します。
目次
■斜視の種類 - 黒目の位置(視線)のずれ –
◎黒目の位置(視線)の位置のずれ方による種類があります
斜視の「目の見た目(黒目の位置のずれ方)」としては、以下のような種類があります。
[黒目の位置(視線)のずれ方別 斜視の種類]
水平斜視=内側・外側のずれによる斜視の分類
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内斜視(ないしゃし):左右どちらか片方の黒目が内側に寄った状態
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外斜視(がいしゃし):左右どちらか片方の黒目が外側に寄った状態
上下斜視=上・下のずれによる斜視の分類
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上斜視(じょうしゃし):左右どちらか片方の黒目が上に寄った状態
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下斜視(かしゃし):左右どちらか片方の黒目が下に寄った状態
回線斜視=斜めのずれによる斜視の分類
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回線斜視(かいせんしゃし):左右どちらか片方の黒目が斜め上・斜め下に寄った状態
次の項からは、様々な斜視の種類をお伝えします。以下では上下斜視・回旋斜視については特にふれていませんが、原則として、上下斜視・回旋斜視も内斜視・外斜視の種類・原因に準拠します。
■斜視の種類 - 常に斜視の状態or時々、斜視が現れる –
◎恒常性斜視、間欠性斜視の2種類があります
斜視=「黒目の位置のずれ・斜視の見え方(複視:物が二重に見えるなど)」が現れるタイミングとしては、以下の2種類があります。
[黒目の位置(視線)のずれ・斜視の見え方が現れるタイミング別 斜視の種類]
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恒常性斜視(こうじょうせいしゃし):
常に、片方の黒目の位置がずれており、両目でまっすぐに物を見られない状態。
<考えられる原因>
遺伝、目を動かす脳の神経や目の筋肉の異常、重度の遠視、脳腫瘍や脳卒中・甲状腺眼症・糖尿病・重症筋無力症などの病気(主に大人の恒常性斜視)、目の外傷(目の怪我)、病気や神経障害に起因する目の神経の麻痺など
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間欠性斜視(かんけつせいしゃし):
いつもではなく、時々、片方の黒目の位置がずれ、両目でまっすぐに物を見られないときがある状態。
なお、3~4歳頃に発症することが多い、1~2日おきに黒目の位置がずれる「周期性内斜視or周期性外斜視」は間欠性斜視に分類されます。
遠視の子どもは間欠性斜視が起きやすい傾向が見られます。時々、黒目の位置が外側にずれる間欠性外斜視は、子どもの外斜視の中でも特に多い外斜視の一つです。
<考えられる原因>
遺伝、目を動かす脳の神経や目の筋肉の異常、重度の遠視など
■斜視の種類 - 発症時期 –
◎発症時期による、斜視の種類があります
以下のように、発症時期による斜視の種類があります
[発症時期別 斜視の種類]
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先天性内斜視or先天性外斜視:
生後6ヶ月以内に発症した内斜視or外斜視。
※生後6ヶ月以内に発症する「乳児内斜視or乳児外斜視」は先天性斜視に分類されます。
<考えられる原因>
遺伝、目を動かす脳の神経や目の筋肉の異常、重度の遠視(先天性の重度の遠視)など
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後天性内斜視or後天性外斜視:
生後6ヶ月以降に発症した内斜視or外斜視。
<考えられる原因>
目の外傷(目の怪我)、目の神経の麻痺、脳腫瘍や脳卒中・甲状腺眼症・糖尿病・重症筋無力症などの病気、視力不足、加齢(目の組織の機能の低下:大人の斜視(加齢性斜視))など
■斜視の種類 - 内斜視・外斜視 それぞれの特徴 –
◎内斜視・外斜視は、それぞれに症状・原因が異なる場合があります
以下のように、内斜視・外斜視は、それぞれの症状・原因による種類があります。
[内斜視・外斜視 それぞれの特徴]
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調節性内斜視:
主に遠視が原因で起きる内斜視。
1~5歳頃の遠視の子どもは調節性内斜視を併発しやすい傾向が見られます。
<考えられる原因>
遠視(遠視の方が物や人をよく見ようとして、過度に目のピント調整を行うことで黒目の位置が内側にずれてしまう)
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基礎型内斜視or基礎型外斜視(非調節性斜視):
特に原因が明らかではなく、起きる内斜視or外斜視。
時間の経過(年齢)と共に、黒目の位置のずれが大きくなっていくケースが多く見られます。眼鏡での矯正は難しいことが多いです。
<考えられる原因>
不明(目の筋肉の未発達、遺伝などが原因と考えられています)
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廃用性内斜視or廃用性外斜視:
視力の大幅な低下に伴い、両目で物を見る機能(両眼視機能)に異常が起き、現れることがある内斜視or外斜視。
<考えられる原因>
病気や目の怪我による視力の大幅な低下、生まれつきの病気(先天性の白内障など)、
眼瞼下垂(まぶたが下がってしまった状態)、片方の目を長期間使わなかったことによるもの(長期間の眼帯(アイパッチ)装用など)
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急性内斜視(スマホ内斜視など):
突発的(突然)に現れる内斜視。
近年では、スマートフォン・タブレットなどの画面を長時間見すぎたことが原因の「スマホ内斜視」による急性内斜視が多く見られます。
<考えられる原因>
スマートフォン・タブレットなどの画面を長時間見すぎたことによる、目の筋肉への過剰な負担、眼鏡の矯正不足(遠視の見え方を改善するためにかけている眼鏡の矯正が合っていない、など)
■斜視の種類 - 本当の斜視or斜視のように見えるが、斜視ではないもの –
生まれたばかりの赤ちゃんは斜視のように見える「偽内斜視(ぎないしゃし)」であることも。斜視という呼び名がついていますが、偽内斜視は本当の斜視ではありません。
◎本当の斜視or斜視のように見えるが、斜視ではないもの
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斜視:
左右どちらか片方の黒目(視線)の位置がずれ、両目でまっすぐに物を見られなくなることがある状態(=本当の斜視)。
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偽内斜視:
主に生まれたばかりの赤ちゃんが、鼻が低かったり、目頭の皮膚が腫れぼったいなどが原因で黒目が内側に寄っているように見える状態(斜視のように見えますが、斜視ではありません)。
成長に伴い、鼻が高くなって目頭の皮膚の腫れぼったさが軽減することで、偽内斜視(斜視のような見た目)は改善されるケースが多いです。
【斜視でお悩みの方は、まずは一度、当院までご相談ください】
斜視は様々な種類があります。
斜視は様々な種類があるため、患者様ご自身では、どの斜視なのかを正確に見分けるのは難しいことが多いです。医学的に斜視を診断・治療するには、眼科での受診が必要になります。
斜視でお悩みの方、お子様の斜視が心配な保護者様は、まずは一度、当院までご相談ください。
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今回は「斜視の種類」について、ご説明をさせていただきました。
次回のブログでは、「斜視を放置するリスク」をお話しする予定です。
