
3歳児健診で視力の再検査を勧められた保護者さまへ
「気づいてあげられなかったのでは」と胸が痛む一方で、「たまたま集中できなかっただけ」と思いたい気持ちもあるかと思います。視力が育つ時期には限りがあり、早めの確認が将来の見る力を支える一助になります。この記事では、ご家庭で気づけるサイン3つと精密検査の流れを整理します。
この記事の要点まとめ
- 3歳児健診の指摘は、見え方の発達を確認する入口として捉えられます。
- 目を細める・近づいて見るなどの仕草が、家庭で気づける手がかりになります。
- 精密検査は短時間の機器測定が中心で、治療用眼鏡には保険・助成制度も活用できます。
3歳児健診で指摘されたら知っておくべき「子どもの弱視」と成長の仕組み
弱視とは、眼鏡で矯正しても視力が十分に出にくい状態を指します。目そのものより、脳が「見る力」を学び切れていない点が背景にあると考えられています。
なぜ3歳頃が限られたチャンスなのか?視力発達のメカニズム
生まれたばかりの赤ちゃんの視力はごくわずかで、ものを見る経験を重ねながら脳の視覚回路が育っていきます。この発達が活発な時期は感受性期と呼ばれ、就学前が一つの目安とされます。強い屈折異常(遠視・乱視など)や斜視、左右差の大きい不同視があると、片方または両方の目にぼやけた像しか届かず、回路の成長が進みにくくなると考えられています。
裏を返せば、この時期に原因が分かれば、視力の発達を後押しする手立てを検討しやすくなります。町田市の3歳児健診で声をかけられたのは、その入口に立てたということでもあります1。
健診で引っかかった=即・重症ではない?二次検査の真の目的
3歳児健診の視力検査は診断ではなくスクリーニングです。見落としを減らすため、あえて幅を広く取って拾い上げる設計になっています。そのため、その日の機嫌や集中力の影響で再検査となるお子様も珍しくありません。
ただ「たぶん大丈夫」と受診を先延ばしにすると、確認の機会そのものが遠のいてしまいます。二次検査の目的は異常を探し出すことではなく、経過を見るだけでよいのか、矯正を検討したほうがよいのかを切り分けること。結果を知って今後の見通しを立てるための検査と受け止めていただければ十分です。
【家庭で気づくサイン】保護者が見逃したくないお子様の行動・視線3選

子どもは見えにくさを言葉で訴えにくいものです。片目の視力が弱くても、もう片方が補うため生活に支障が出にくいことがあります。だからこそ、日常のちょっとした仕草が手がかりになります。
サイン1:目を細める・首をかしげて物を見る独特の仕草
ピントが合いにくいと、まぶたを細めて光の入り方を絞ったり、首を傾けて像がはっきりする角度を探したりする場合があります。乱視のあるお子様に見られやすい姿勢とされています。テレビを見るとき、いつも同じ方向に頭が傾いていないか観察してみてください。
サイン2:テレビや絵本に極端に顔を近づけて見る動作
画面や本に顔がつくほど近づける習慣が続く場合、遠くの像を捉えにくい状態が隠れていることもあります。ただし近づく癖は集中の表れでもあり、それだけで判断はできません。「何度声をかけても戻ってしまう」ほど一貫しているかが一つの目安です。
サイン3:片目を隠すと嫌がる・つまづきやすく視線が合わない
遊びの中で片目を手でそっと覆ったとき、片方のときだけ強く払いのける、機嫌が変わるといった反応があれば、隠されていない側の目の見え方に差がある可能性を考えます。段差でつまずきやすい、両目の視線が合いにくい、写真で片目の光り方が違う——こうした点も、斜視や不同視のサインとして知られています12。
サインが一つでもあれば、健診結果と合わせて眼科で相談する価値があります。
眼科で行われる精密検査の流れとお子様への負担に配慮した専用機器
二次検査で調べるのは視力の値だけではありません。「なぜ見えにくいのか」を確かめる内容が中心で、多くは座って数分程度で終わります。
屈折検査や斜視検査とは?身体への刺激が少ない機器測定の工夫
柱になるのが屈折検査です。目に触れることなく、遠視・近視・乱視の度合いを機器で測定します。スポットビジョンスクリーナーのような手持ち型の機器なら、1メートルほど離れた位置から両目を同時に測定でき、痛みを伴いにくく、光もカメラのフラッシュほど強くありません。抱っこのままでも測定できるため、機器に慣れないお子様にも取り入れやすい方法です。
あわせて、片目を交互に覆って目の動きをみる斜視検査、必要に応じて目薬で調節を休ませた状態での再測定や眼底の確認も行います。当院では眼底カメラや光干渉断層計(OCT)、液晶視力表などを備え、見えにくさの背景に別の要因がないかまで含めて確認できる体制を整えています1。
集中力が続きにくいお子様でもスムーズに検査を受けるためのポイント
検査は視能訓練士などのスタッフが、絵指標や音のするおもちゃで視線を誘導しながら進めます。年齢に応じて、輪の切れ目を答える方法や絵カードを使う方法を選びます。
ご家庭でできる工夫は3つ。①受診前日までに「片目を隠して絵を当てる遊び」を数分試す、②お昼寝や食事の後を避け、機嫌のよい時間帯に予約する、③健診の通知と母子健康手帳を持参する。一度で終わらせようと気負わず、2回に分けて確認する前提でいらしていただいて構いません。
弱視と診断された場合の主な治療法と健康保険・助成制度の活用法
弱視の可能性が確認された場合も、就学前であれば取り組める選択肢があります。中心となるのは手術ではなく、日々の装用と訓練の積み重ねです。
治療の基本となる「治療用眼鏡」の装用と訓練アプローチ
まず検討するのは治療用眼鏡による矯正です。屈折異常を整えて網膜にはっきりした像を届け、脳の視覚回路が育ちやすい環境をつくることが目的とされています。毎日の装用を続けることが土台になります。
左右差が大きいときは、見えている側の目にアイパッチを貼る、あるいは目薬で一時的に見えにくくして、弱い側の目を積極的に使う訓練を併用する場合もあります。1日の装用時間や期間は状態によって異なり、数か月ごとに視力の推移をみながら調整していきます。必要な期間や変化の度合いには個人差があるため、定期的な通院での見直しが欠かせません12。
治療用眼鏡を作成する際に適用できる健康保険と自治体助成
小児の弱視・斜視・先天白内障術後などに用いる治療用眼鏡は、年齢条件や医師の指示書といった要件を満たせば、公的医療保険の療養費として一部が支給される仕組みがあります。流れは「眼科で処方・作成指示書を受け取る」→「眼鏡を購入し領収書を保管」→「加入する健康保険へ申請」が基本です。さらに町田市など自治体の子ども医療費助成と組み合わせられる場合もあります。
条件や上限額、更新できる間隔は制度改定で変わることがあります。購入前に眼科の窓口と保険者へ確認しておくと、手続きを進めやすくなります。当院ではホームページで診療体制や外来受付時間の変更もお知らせしていますので、共働きで受診時間の調整が難しい保護者さまも、事前にご確認いただけます。
よくある質問
Q1. 子どもの弱視はいつ頃わかるのでしょうか?
A. 見た目では分かりにくいため、多くは1歳6か月健診や3歳児健診のスクリーニング、あるいはご家庭で気づいた仕草がきっかけになります。視力の発達には感受性期があるとされるため、気になった時点で眼科にご相談いただくことがすすめられています。
Q2. 子どもの弱視はどうやって見つけますか?
A. 視力検査だけでなく、屈折検査で遠視・乱視・左右差を調べ、斜視の有無や眼の状態も確認します。機器による測定は目に触れず短時間で終わるものが多く、抱っこのままで進められる場合もあります。
Q3. 3歳児健診の視力検査は難しいと聞きます。うまくできませんでした。
A. 3歳半前後は集中が続きにくく、答え方の理解にも差があります。できなかったこと自体が異常を意味するわけではありません。二次検査で改めて確認する流れが一般的です。
Q4. 健診で乱視が見つかった場合、どうなりますか?
A. 程度によって、経過観察のみのケースと、治療用眼鏡での矯正を検討するケースに分かれます。乱視そのものが軽くなるかどうかは個人差があり、断定はできません。まずは精密検査で度合いを把握することが出発点です。
Q5. 検査は痛かったり、眩しかったりしませんか?
A. 屈折検査は目に触れず、光が当たる時間もごく短いものです。調節を休ませる目薬を使う場合は、しばらく近くが見えにくくなったり眩しさを感じたりすることがあるため、事前にご説明します。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 日本小児歯科学会 https://www.jspd.gr.jp/
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